マガジンのカバー画像

カレーの旅

25
記録写真家ジンケ・ブレッソンによる写真。カメラを片手に世界各地をめぐりながら、「カレーとは何か?」を探る旅の記録です。
運営しているクリエイター

記事一覧

カレーの旅024:水牛が長時間煮込まれる

カレーの旅024:水牛が長時間煮込まれる

インド・オールドデリーにあるビーフニハリ専門店を訪れたのは、早朝6時。この時間から仕込みが始まるという情報を得ていたからだ。

眠い目をこすりながら店に向かうとコックと従業員が仕込みの準備をしている。路上に面した店の扉は開かれ、店頭に立てば目の前にある大きな鍋がすべて覗ける状態だ。

そこから6時間、僕は仲間と仕込みの一部始終を見届けた。鍋の口がふたで密閉されたのは12時。店のシャッターが閉じた。

もっとみる
カレーの旅023:そーか、その順もありなのか。

カレーの旅023:そーか、その順もありなのか。

インドの市場の片隅で、チャイを飲んだ。
紅茶葉とスパイスとミルクと砂糖を一緒に煮出して作るこのドリンクにも、いろんな調理法がある。あのとき、あの場所で、「そーか、その順もありなのか」と感心したことを思い出す。
ゴールがおいしいチャイになれば、道筋は問わない、ということなのか。

そして、後々、あの光景を振り返るとき、いつか誰かに言われた言葉を思い出す。
「目的のための手段に溺れるな」

今でも自分

もっとみる
カレーの旅022:2階の2階に並ぶ小鉢たち

カレーの旅022:2階の2階に並ぶ小鉢たち

インド・コルカタに行くと必ず訪れるレストランがある。
その店は、必ず1階は満席なので、2階へ上がる。
空いた席に座ると店員が大きなお盆に小鉢をずらりと並べてやってくる。好きなものを選び、自分のテーブルに置き、食べる。
会計の仕組みがどうなっているのかは知らないが、お金を払って店を出る。

あるとき、2階席の奥にある調理場をのぞいてみた。
突き当りには長テーブルがひとつ。その上にあの小鉢たちが並んで

もっとみる
カレーの旅021:モーニングディライト

カレーの旅021:モーニングディライト

インド・オールドデリーにあるニハリ屋は、水牛の煮込みを12時間かけて作る。早朝5時。薄暗がりの中で仕込みが始まる。鍋に順繰りに素材を投入。ひたすらかき混ぜ続けること6時間。昼前に鍋のふたは閉じられた。

6時間の間、鍋の前に立って取材と撮影を続けた。不思議と疲れは感じなかった。「開店時間に戻る」と言って、一度、その場を離れた。

6時間の間、炭火をかき出した熱源はとろ火で加熱を続けてくれる。夕方5

もっとみる
カレーの旅020:ミールス・レディ

カレーの旅020:ミールス・レディ

東京スパイス番長のメンバー(シャンカール・ノグチ、ナイル善己、メタ・バラッツ、水野仁輔)でチェンナイへ行き、ミールスを食べた。
4人で同じ注文し、4人の前に同じ大皿が置かれ、4人で同時に食べ始める。でも、4人それぞれが違う味を味わっている。
何を選び、どれと混ぜ、どのくらいを口に運ぶかは4人バラバラだからだ。南インドの定食(ミールス)は、それが楽しい。

(ジンケ・ブレッソン)

カレーの旅019:ロースト万歳!

カレーの旅019:ロースト万歳!

イギリス・ロンドン。開店直後のモダンインディアンレストラン。何日目かの訪問だったから、入店するなりメニューの中の目当てのものを注文。モダンインディアンレストランで僕が好きなのは、タンドール料理類。普段あまり飲まない酒を飲みたくなる。
(ジンケ・ブレッソン)

カレーの旅017:モダンインディアンロティ

カレーの旅017:モダンインディアンロティ

なんのパンだったか、思い出せない。このレストランはロンドンで生活していた3か月間で最も通ったモダンインディアンレストラン。トリュフナンなんていう、超高級ナンもあったけれど、写真を見てもトリュフはのっていない。アロラシェフとはその後、仲良くなって調理の取材もお願いした。その内容をまとめた書籍「Labo India LEGEND」は既に絶版。彼のレストランは閉店してしまった。ワールドワイドにインド料理

もっとみる
カレーの旅016:チキンティッカマサラ

カレーの旅016:チキンティッカマサラ

かつてこの地で親しまれていたと聞くブリティッシュカレーを探すために3か月間、ロンドンに滞在した。毎日毎日、野良犬のように街を徘徊して「British Curry」の文字を探す。ない。見つからない。パブへ入るとチキンティッカマサラがあった。当時、イギリス人の国民食と呼ばれることもあったカレー。濃厚で沁みる。
(ジンケ・ブレッソン)

カレーの旅015:モダンインディアンサグ

カレーの旅015:モダンインディアンサグ

ロンドンの『チャツネマリー』にて。食べかけで撮ったんですが、緑のグラデーションが、2種のソースをかけたのか、スプーンで混ぜて生まれたのか、思い出せない。
(ジンケ・ブレッソン)

ジンケ・ブレッソンの世界カレー紀行

ジンケ・ブレッソンの世界カレー紀行

「ジンケさんの写真集をうちから出しませんか?」
思いがけない、とはこのことを言う。今年のはじめ(だったかな)、僕はとある出版社から依頼をいただいた。瞬時に嬉しさが体中を駆け巡り、深呼吸をして、気持ちをなんとか落ち着かせ、それからお断りの返事を書いた。

2021年の秋、僕はカレーの人を卒業して記録写真家になった。世界中のカレーとスパイスだけを専門的に記録する写真家である。あれから2年が経った。写真

もっとみる
カレーの旅014:インドのフルーツ

カレーの旅014:インドのフルーツ

市場へ行くと、フルーツと野菜の境界線が判別しにくいものに出会います。判別する必要はないんですけれどね。いずれにせよ、いろんなものがそろそろおいしい季節になってきました。

(ジンケ・ブレッソン)

カレーの旅013:高級ホテル

カレーの旅013:高級ホテル

海外の高級ホテルが好きなんです。どの旅でも、どこかの街の最高級ホテルに2連泊する、みたいなことを楽しみにしています。他の日程の宿泊は中級ホテルに泊まってセーブして、夢の連泊が旅のハイライトのひとつ。2泊3日の真ん中の1日は、あまり外出もせず、プールサイドでだらだらしたりして。贅沢。

(ジンケ・ブレッソン)

カレーの旅012:ヘイ、タクシー!

カレーの旅012:ヘイ、タクシー!

旅先ではタクシーによく乗る。本当に便利だ。昔は「話が違う!」と料金に関するトラブルもたまにあったが、旅慣れてからはそんなこともなくなって久しい。タクシーに乗って車窓からの風景を眺める時間は豊かだ。窓を開けると誇りがすごかったりするけれど。

(ジンケ・ブレッソン)

カレーの旅011:イモリ? ヤモリ?

カレーの旅011:イモリ? ヤモリ?

イモリとヤモリの違いはよくわからない。イモリは両生類、ヤモリはハ虫類。ヤモリは漢字表記では『家守』と書くそうで、たいていインドではホテルの部屋などで見かけるからヤモリなんだろうな。よく目にするせいか、もうなんとも思わなくなってしまった。「おお、またお前か」くらいの感じ。慣れるとは恐ろしいことだ。

(ジンケ・ブレッソン)