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カレーのヒント 072:期待以上で想像未満

新刊4冊の原稿執筆地獄がずっと続いている。

気分転換でもしないと筆が進まないから、みたいな曖昧な理由で今さら、The Beach Boysの『SMiLE』を買った。これをBGMにしたら、スラスラといい文章が書けるんじゃないか、という浅はかな考えを実行に移しているのだ。

ライナーにはブライアン・ウィルソン本人の言葉が書かれている。冒頭から「僕は完璧主義者だ」とある。そうだろうねぇ。と思いながら読み進める。当時のグッドヴァイブレーションセッションの話や制作予定だった『SMiLE』をお蔵入りにした経緯などが書いてあって面白い。完璧主義者ですからね、突然「全部やめた!」とかなるわけですね。完璧主義者だからね、それから何十年も経って「ようやく完成」なんてこともあるわけですね。

一方で、完璧主義者でもなんでもない水野はこうして目の前の原稿にウンウンうなっている。完璧主義者じゃないから今年もスケジュール通り、新刊は出ることになるのだろう。とはいえ、僕も書籍を作るときに心掛けていることがふたつある。

1.  編集者や読者の期待を超えること

2  自分自身の想像を超えること

1については、必須である。必ず、絶対に、超える。「そんなふうになるなんて思ってもみませんでした!」という声を聞けるまでは全力を尽くす。そして、それは、過去の書籍でもある程度のレベルで、実現できていると思う。だから、これは僕にとってノルマと言ってもいい。

2についてが問題なのだ。満足のいくレベルで達成されたことは一度もない。部分的には、「自分でもここまでいけるとは思わなかった」みたいなこともある。でも、もし、僕がブライアン・ウィルソンだったら、これまで出版してきたすべての書籍はお蔵入りしているだろう。

自分の想像をはるかに超えたものを生み出すために心掛けていることがある。それは、「考える」ではなく、「考え抜く」ことだ。新刊の制作が始まると、基本的には寝ても覚めてもずっと新刊のことを考え続けている。誰かと話していても、別のことをしていても、食事をしていても歯を磨いていても、新刊のことを考えている。自分では、考え抜いているつもりでいるけれど、想像を超えられないのだから、「考え抜く」がまるで足りていないんだろうなぁ。

ま、ぶつぶつ言ってないで、新刊の作業に戻ろう。BGMの『SMiLE』は今この瞬間もとっても軽快に部屋に響き渡っている。ああ、ブライアン・ウィルソンになりたい。

(水野仁輔)


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別名“カレープレーヤー”養成所。入学すると50人の仲間(同級生)に出会える。授業に出るとカレーの未知なる魅力に翻弄される。卒業すると500人以上の仲間(卒業生)ができる。つまり楽しい日々はずっと続く。そして校長の僕は取り残されてちょっぴり寂しくなる。そんな学校です。水野仁輔