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カレーのヒント 025:7テクニック

今年2冊目の新刊撮影を終えた。
カレーをおいしく作るために僕が大事だと考えている7つのテクニック、「火、スパイス、油、塩、水、玉ねぎ、隠し味」を習得できるようになるレシピ本だ。

新刊の撮影は、1年のカレー活動で最も疲労困憊する仕事。今年も4日間連続の撮影を終えて、ふらふらになった。ただおいしいカレーを32品つくるだけならここまでぐったりすることはない。カリ~番長時代は、3日間のイベントで30品をライブクッキングするようなこともあったし。
疲れるのは、おいしく作る以外にたくさんのことを考えながら調理に向かっているからだ。本のコンセプトに沿ったレシピにするために材料や作り方の微調整を常に行う。全体構成や順序などを見ながら使用する具や味わいのバランスを取る。そのレシピを通じて伝えたいことに無理がないかを考える。頭と体をずっとフル回転。

すべては読者が手に取ってくれた時に届くと確信できるポイントだから、努力すればしただけ成果が出る(と思っている)。が、どんなに突き詰めても「きっと届かないよなぁ」と思っている点にも注力している。それは、仕上がりのソースの色や美しさを追求するために火の入れ方を試行錯誤すること。
僕はレシピ本の撮影で「トッピングはしない」、「盛り合わせもしない」と決めている。器に盛り付けてからパクチーを散らすことすらしない。それは、カレーのみ、もしくはカレーとご飯のみというシンプルな表現を目指しているからだ。トッピングや盛り合わせによるデコレーションという“技”が使えないと、必然的にカレーそのもの(もっといえば、ソースの色や形状)に注目が集まることになる。そこに細心の注意を払う。美しいカレーに仕上げたい。
器に盛り付けたら待ったなし。30秒~1分以内にはカメラマンが完成写真を撮り終える。だから、ずっとブツブツ言いながら鍋と向き合っている。4日間連続で朝から晩までそれをやると、ふらふらになる。その分、終わった後の数日間は晴れやかな気分だ。やまない雨はないのだな、と。

そして、すぐに次の試練が待っている。僕にとってレシピ本は、いつも「おいしいカレーのレシピを紹介する本」ではない。料理教室やデモンストレーションをするときにも必ず話すことだけれど、「レシピはあくまでも題材」である。「道具」である。レシピ自体を伝えたいのではなく、レシピを通して伝えたいことがある。今回の新刊でいえば、「7テクニック」だ。それを伝えるために一番大事な作業は、原稿執筆となる。
だから、料理の撮影を終えてから入稿までの時間が本当の意味で書籍づくりの本番となる。ここから僕が原稿に何を書くかで本の価値が決まると僕は思う。だから、またぶつぶつ言いながらPCに向かう。自分の既刊本とは全く違う価値を発信したい。「水野のレシピがおいしい」と言われるよりも「水野の本がためになる」と言われたい。

楽しいけれど苦しく、ふらふらになる日々がまた始まろうとしている、のだな……。
(水野仁輔)

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別名“カレープレーヤー”養成所。入学すると50人の仲間(同級生)に出会える。授業に出るとカレーの未知なる魅力に翻弄される。卒業すると500人以上の仲間(卒業生)ができる。つまり楽しい日々はずっと続く。そして校長の僕は取り残されてちょっぴり寂しくなる。そんな学校です。水野仁輔

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