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カレーのヒント 049:学ぶ→身につく→実践する

友人から、ダウンタウン・松本人志のツイッターに「メソッド」という言葉が出てきた、と連絡があった。昨年の著書『スパイスカレーを作る』で、カレーメソッドとスパイスメソッドを公開したからだと思う。こんなツイートだ。

なんてことない会話の中でカッコ良く【メソッド】ってサラッと言ってみたいが顔が赤くなりそうで不安。
 
顔が赤くなることもなくメソッドを多用した本を出版した僕は、このツイートを読んでほんの少し顔が赤くなった。

大学時代、笑いと関係ないサークルで、漫才コンビを組んでいた僕が、最も笑いを学ばせてもらったのは、ダウンタウンの松ちゃんだった。その当時のインパクトが強烈だったこともあるけれど、今でも僕は勝手に松本チルドレンだと思い込んでいる。

お世話になった教材は、『ダウンタウン汁』という深夜番組だ。前半のゲストを迎えたトークでは、話の拾い方や進め方を主に学んだ。後半の大喜利では、笑いとは何かを学んだ。録画を何度も繰り返し見て、松本流の笑いを自分に叩き込んだ(つもりだ)。
 
その後、僕が面白い人間になれたかどうかは疑わしい。が、いまだに人前で話したり、みんなで話したりしているときにちょっとでも笑いが取れたりするのは、あの勉強のおかげがあるんじゃないかと思っている。

が、今回のツイートで、ツイート内容とは関係ないのだけれど、昔が懐かしくなってそんなことを考えているときに、ふと考えたことがある。「学ぶ」ということと「身につく」ということと「実践する」ということの間にはギャップがあって、それらが「=」で結ばれないのだと改めて痛感したのだ。

僕は、ダウンタウン松本人志の笑いを学んだ(つもり)だ。だから、今でも彼のトークを聴く機会があると、どこがすごくてどこが面白いのかは普通の人よりは理解できるつもりでいる。でも、あのセンスや技術が身についているか? と聞かれたら「NO」と言うしかない。ほんの少しのエッセンスが仮に身についていたとしたら、それを人と話すときに実践できているか? と聞かれたら、やはり答えは「NO」である。

そうか、カレーを作るのも同じなんだ、と思った。おいしいカレーを作るためのテクニックというものがある。たとえばレシピ本を読んでそれを学んだとしても、すべての人が身に着けられるわけではない。身につけられたとしてもそのままそれを鍋の前に立って実践できるとは限らないのだ。
 
頻繁にレシピを提案する立場の僕は、その点を考慮しなければならない。今年の新刊『スパイスカレードリル』は、そういう意味で難易度の高い内容だった気がしている。レシピ本が実用書である以上、実用性とは読者が簡単に実践できることが大事なんだと改めて思った。

来年の新刊をどうするか、について、軽く雑談程度の打合せをした。まだどうなるかわからないけれど、「学ばず、身につけず、実践はできる」という新感覚なレシピ本を作ることができるかもしれない。これができたらどれだけ画期的なことだろう。何もしなくてもいきなり爆笑が取れるのだから。

実践できることが読者にとって最大のメリットである。学びたいか身につけたいかは人によって違う。学ばなくても身につけなくてもおいしいカレーが作れるレシピ本という概念は、今までの自分にはなかった。このことをもう少し考え続けて来年に臨みたいと思う。

(水野仁輔)

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別名“カレープレーヤー”養成所。入学すると50人の仲間(同級生)に出会える。授業に出るとカレーの未知なる魅力に翻弄される。卒業すると500人以上の仲間(卒業生)ができる。つまり楽しい日々はずっと続く。そして校長の僕は取り残されてちょっぴり寂しくなる。そんな学校です。水野仁輔

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