カレーの学校 授業レポート 44期@秋田:6限目の授業は「AIR SPICE 100号記念トーク」
水野校長がカレーの学校運営の傍ら、2016年から続けている“毎月新しいカレーが作れるスパイスセット”のお届けサービスの誕生秘話や裏話、レシピの意味などが語られました。そこから見出せる事とは…
実際にカレー屋さんを運営していない人にとっても、何かをカタチにする時のヒントがありそうです
◾️AIR SPICE誕生のきっかけ
2015年頃にはすでに膨大な数のカレーレシピを世に届けていた水野校長。ですが商業出版の場合、ちょっぴり不満に思う事もあったそう。それは…
①記載できるスパイスの制限
一般のカレー本に載せるレシピは、使用するスパイスの種類が少ないほど喜ばれたり、入手困難な香りの場合は控えた方が良かったり……思うように書けないことも
②文字量の制限
長い文章は読まれない
③スパイスのクオリティへの不安
香りはナマモノ。読者が買い揃えるであろうスパイスとのクオリティの差を埋めたい
これらを解消するために
自分で選んだ納得のスパイスをレシピ付で発送しちゃえばいいんじゃないの?
サブスクリプションの定義は頭になかったけど、毎月新しいレシピを届けるって良いんじゃない?
…と思いついたカタチが、8年以上続くAIR SPICEの原型だそうです
世の中には、変形サイズで印刷されたAIRSPICEのレシピをピッタリ収納できるファイルがないため、オリジナルサイズで作っちゃったり
◾️不満を、新しいカタチへ
①2度と同じセットは作らない…というスタンスのもと、AIR SPICEで使用するスパイスは、ホール・パウダー合わせて10種類に決める(それ以上でもそれ以下でもなく…)
窮屈の中でモノを生み出すと言うことはクリエイティビティを養う事につながり、校長にとって毎月新しい配合、新しい調理手法を考えるのはもはや趣味の域へ到達
②エッセイとレシピに自由さが生まれた
・オモテ面には1300〜1400文字で、連載1本分くらいのエッセイを記載。作るときの心構えや、そのレシピ設計に込めた大切なポイントをこっそり忍ばす事ができるように
・ウラ面記載のレシピにおいては、AIR SPICE読者ならきっと隅々読んでくれるはず!…と、普通のお料理本には見られない細かなところにまで言及。レシピ開発は完成までに何度か手直しされ、ギリギリまでアイデアを調整している。同じ頃にアップされるYouTubeの動画と併せて作るのもオススメ
・タイトルは必ずカタカナ&漢字二文字で(笑)
・完成量が明記されている理由
完成量を測る人がいるかわからないけど、もし測ったときに仕上がりの数字が近ければきっとレシピ開発者の作った味と似ているのでは…という目安に
・スパイスの中身をグラム数まで公開したことは当時多くのビジネスマインドに長けた優しい知人達を驚かせた。そもそも秘密主義であったカレーの世界、スパイスの配合も秘密にしておけばSBの赤缶のように自分は一生食いっぱぐれないかもしれない。けれど、全てを無償でオープンにする事は未来のカレーの進化につながり、オープンにした人の元へも良きカタチで何かしらが戻ってくるはず
校長が日々唱えている「カレーのオープンソース化」を形にしてるのがAIR SPICE
③ 読者に届けるスパイスの調達は、仲間であり貿易商のシャンカールノグチさんに依頼。開発したレシピはインドで個包装され、毎月20日前後に空輸で日本に。それを30〜31日の月末に梱包し、翌月1日に発送。つまりインドで調達されたスパイスが日本の読者に届けられてカレーになるまでたったの2週間弱!日本で販売されているスパイスセットとしては最も鮮度の高いものを届けられている
◾️様々な分野の才能とコラボ
AIRSPICEはスタートして以来、毎年一貫してお馴染みのデザイナーさん、写真家さん、スタイリストさんと集まって、むこう一年間のエッセイなどに添えるカレーの写真や制作物を作っているのだそう
それぞれの分野で実力があり信頼のおけるメンバーと共に何かを創るということは、どの舞台においても自分の現在地を確認し、先へ進む原動力になるのだな、と感じました
不満や窮屈を味方にして新しいアイデアを生み出す様子、モノづくりへの強い意志と、沢山のこだわりに触れる事ができた6限目の授業は、普段クリエイティブな仕事を生業としない自分にとっても毎日の見え方が変わりそうな刺激がいっぱいでした