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カレーのヒント 038:ライバル? 競合?

最近、レシピつきのスパイスセット商品が増えてきた。

カレーが局地的に流行っているからかもしれないし、こういうご時世だからということなのかもしれない。そもそも、レシピつきのスパイスセットというもの自体は、大昔からたくさん存在する。僕も4年ちょっと前からやっている。そして、僕のところへ問合せがいくつも来るようになった。

「あのスパイスセット、どうやっているんですか?」

ほとんどが面識のある人からということもあるけれど、割とストレートな問い合わせが多い。普通に考えたら、「失礼な!」と怒ってもいい行動なのかもしれない。ライバル商品になるかもしれないものを作ろうとしている人が「やり方教えてください」だなんて。

でも、僕のところにはそういう問い合わせが実際に来ているし、中にはその結果、もう商品化されたものもいくつかある。僕は、この手の問合せが来たら、何一つ隠すことなく僕が知っていることはすべて伝えることにしている。秘密にしようとか守りたいとかいう考えは、ない。

スパイスセットの販売、やりたい人がいたらどんどんやればいいと思う。そういえば、僕のやっているセットは、グラム単位で配合を公開している。僕の知る限り、それをしているサービスを他にはなさそうだ。スタートしたばかりのころは、同業者やこの業界にいる何人かの人たちから善意のアドバイスをいただいた。

「水野君、あれは公開しちゃだめだよ。秘密にしておいて『おいしかったでしょう? じゃあ、また買ってね』というのが商売なんだから」

でも僕の考え方は当初から違っていた。だから、いまもこう言っている。

「おいしかったら配合は商品にすべて書いておきましたから、一度買ったら二度目は買わなくても自分で調合できますよ」

たぶん、僕はそういう場所に立っているから、隠さない、守らないことに対して何の危機感もないのだと思う。悪気もなく僕に「あのスパイスセット、どうやっているんですか?」と聞いてくる人が増えているのは、(これは希望的観測だけれど)もしかしたら僕のそういうスタンスが届いているのかもしれない。だから、「水野さんだったら教えてくれそうだ」とか思われているのかもしれない。とてもいいことだと思う。

僕が配合や仕組みや手法をすべて公開することで、ライバル(?)や競合(?)が増えて、その結果、僕の作っているスパイスセットの売上げ半分になったり、10分の1になったりしたとしても別に僕は構わない。僕がそのスパイスセットに意味や面白みを感じている以上、10分の1の人たちに向けて僕はレシピを開発し、スパイスをセットして送付すればいいのだから。

もし、利用者がゼロになってしまったら? そのときは、存在価値はないのだから、やめて他のことを考えたり別のことを始めたりすればいい。何の問題もないじゃないか。……と僕は思っている。これからも、どんどん色んなスパイスセットが世の中に出ていくといいなぁ。

偉そうなことを言うわけではないが、僕にはライバルは存在しない。僕より上手にカレーを作る人はたくさんいる。僕よりいいレシピを考案する人も僕より優れたスパイスを配合する人も、僕よりカレーやスパイスに詳しい人もやまほどいる。でも僕にとってその人たちは脅威ではない。僕が恐れているのは、僕自身がやっていることに飽きたり、自分のアイデアが尽きたりすることだけだ。

そうならないよう、自分を磨き続けたいと思う。
そうならないよう、一緒に遊んでくれる仲間を大事にしたいと思う。

(水野仁輔)


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別名“カレープレーヤー”養成所。入学すると50人の仲間(同級生)に出会える。授業に出るとカレーの未知なる魅力に翻弄される。卒業すると500人以上の仲間(卒業生)ができる。つまり楽しい日々はずっと続く。そして校長の僕は取り残されてちょっぴり寂しくなる。そんな学校です。水野仁輔

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