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カレーのヒント 064:監修、監修、監修……

監修という仕事はできる限りしないことにしている。

なんというか、自分らしくないと思っているからだ。たとえば、カレーの本を1冊作るとき、僕は自分ですべての原稿を書き、すべてのレシピを考え、すべての料理を作りたい。誰かにまかせたくはないのだ。それが僕のやりたいものづくりだから。監修という言葉には、なんとなく“自分では直接動かない”とか“最後まで責任を取らない”みたいなイメージが付きまとう。誤解もあるかもしれない。でも、僕は、監修するくらいなら関係しない方がいい。

ところが、最近、「◎◎を監修してください」というお話が次々と舞い込んでくる。ひとつずつお断りするのだが、中には、「これは面白そう!」というものもある。そういう場合、僕は、わがままなことに「監修するのではなく、まるごと自分でやらせてください」とお願いすることがある。それが通ればやるし、通らなければ、やらない。やらない代わりに東京カリ~番長をはじめ、周囲にいる仲間たちにお願いする場合もある。

ともかく、「監修、監修、監修……」と監修お化けに侵され始めている状況はなんとかしなければならない。

そんなこんなを考えていた時に、COOK INDIAのレシピ動画撮影があった。そういえば、このCOOK INDIAは、僕が協力するシェフのレシピ付きスパイスセットである。シェフがレシピとスパイスの配合を出し、僕と相談することで調整して商品が出来上がる。動画を撮影するときには僕が作って横にいるシェフとトークする。それとは別にシェフと僕とで対談した内容がレシピシートに短い読み物として記載される。商品には、すみっこに小さく「Supported by AIR SPICE」と入る。

これって、言ってみれば監修じゃないか! 僕はこのCOOK INDIAという監修の仕事が楽しくて仕方ないのである。そう考えると監修という仕事も内容によっては、自分で一からすべてを作り出すのと同じくらい、いや、それ以上に充実する場合もあるんだと気が付いた。しかも、僕はこういう活動をするとき、自分自身の喜びと共に仲間のシェフたちの魅力を発信するお手伝いをしていることに喜びを感じている。

監修というものの仕事の本質は、こういうところにもあるのかもしれない、と思った。だとしたら、これから僕のところにくる監修の仕事に対しては、少し付き合い方を変えてもいいかもしれない。僕自身が直接プレイしなくても、僕自身が慕う、尊敬する、お付き合いしている、たくさんのいろんな仲間を巻き込むことで新しくユニークなアウトプットができそうだ。

監修をお願いされているうちが花、とでも捉えてみようかと思う。僕が監修をお願いされるような立場でいられる限り、僕自身ではなく、僕の周辺にいる魅力的な人たちを担ぎ出すというおせっかいをもっとやっていこうかな、と思う。そんな状況はずっとは続かないのだから。

(水野仁輔)

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別名“カレープレーヤー”養成所。入学すると50人の仲間(同級生)に出会える。授業に出るとカレーの未知なる魅力に翻弄される。卒業すると500人以上の仲間(卒業生)ができる。つまり楽しい日々はずっと続く。そして校長の僕は取り残されてちょっぴり寂しくなる。そんな学校です。水野仁輔

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