カレーのヒント 076:たまには、カレー“の”お話。
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カレーのヒント 076:たまには、カレー“の”お話。

2010年に著書『かんたん、本格! スパイスカレー』を出したとき、
「スパイスカレーなんて言葉を使ったら誰にも届かないかもしれない」
とビクビクしながらだった。

2019年に著書『スパイスカレーを作る』を出したとき、
「スパイスカレーなんて言葉はみんなが使い始めたからもう使いたくない」
と駄々をこねた。

そして僕からは代案を出した。『スパイスでカレーを作る』にしたい。“スパイス”と“カレー”の間に“で”を忍ばせる。デザイン的にはスパイスカレーに見えなくもないから、いい落としどころなんじゃないか、と思ったのだけれど、あっさり断られた。編集者の見解は、「水野さんが自分で生み出した言葉なんだからこの言葉と共に発信を続ける運命なんですよ」ということだった。おとなしく受け入れることにした僕は、2020年に『スパイスカレードリル』、2021年に『スパイスカレー新手法』を出すことになった。

未練がましい僕は、いまでも「あのタイトルはあれでよかったんだろうか」と思い返すことがある。“で”がよくなかったんじゃないか、と。とはいえ、『スパイスとカレーを作る』じゃおかしいし、『スパイスにカレーを作る』でも『スパイスをカレーを作る』でも意味がわからないし。もしかしたら、あの一文字だったら、行けたかもしれない。

“の”である。

『スパイスのカレーを作る』

なんだかちょっと頭悪そうだけど。

どうやら僕は“の”を挟むのが好きみたいだ。「カレーの学校」を運営しているし、「カレーの車」も「カレーの教室」もやっている。「カレーの修学旅行」とか「カレーの林間学校」とか「カレーの遠足」というのもあった。最近は「カレーの寺子屋」を始めたし、一部では「カレーの人」と呼ばれている。

カレー専門店を営むつもりはないけれど、もし僕がカレー店をやるなら、店の名前は「カレーの店」にすると決めている(やらないけどね)。少し前に仲間が「カレーの雑誌という名前のZineを作ろうと思っているんです」と言って取材を受けたことがあったが、「カレーの雑誌」という名前を取られたのが悔しくて取材の中身を覚えていない。

なんだろうな、間に“の”が入るだけで、僕の好きな響きになるのだ。

玉ねぎを干してカレーを作る研究会メンバーで、今後の方向性について話し合いをした。玉ねぎを乾燥させるところで止めず、そのあと、パウダーにしてスパイスとブレンドし、カレーを調理することについて議論を重ねていくうちに、新しい取り組みにつながるキーワードを見つけてしまった。

カレーの粉。

そう、オリジナルでカレーの粉を作ろうという話になったのだ。カレー粉ではない。カレー“の”粉である。この違いは大きい。響きが素敵なだけでなく、できあがるものが全く別物なので。そして、僕にとって大事なポイント、「カレーの粉」でやろうとしているアプローチは他で見たことがないのだ!

盛り上がってきた。これは面白いことになりそうだ。だから、たくさん、書いておこう。

カレーの粉
カレーの粉
カレーの粉

やっぱり、“の”が入るといいんだよなぁ。

(水野仁輔)

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別名“カレープレーヤー”養成所。入学すると10人以上の仲間(同級生)に出会える。授業に出るとカレーの未知なる魅力に翻弄される。卒業すると600人以上の仲間(卒業生)ができる。つまり楽しい日々はずっと続く。そして校長の僕は取り残されてちょっぴり寂しくなる。そんな学校です。水野仁輔