カレーの思い出 270:生まれる前から

いつの頃からかカレーが大好きになり、今ではカリー中毒のようになってしまった私ですが、子供の頃、我が家では国民食であるはずのカレーがなぜか食卓に全くあがりませんでした。その代わりなのかホワイトシチューはよく登場していて、野菜を切ったり炒めたりお手伝いしていた記憶があります。中学校を卒業して親元を離れ、かなりの年月が流れた頃、久々に会った母との何気ない会話からとんでもない事実が判明しました。なんと母はカレーが嫌いだったのです!いや正確には嫌いになったのです。それは私が生まれた日のことでした。お昼時、産院にカレーの香りが流れました。初孫の誕生に付き添っていた祖母は「まさかカレーライスなんて出てこないよね…。」と怪訝そうな顔をしたそうです。そのまさかでした。なんと出産後のはじめての食事がカレーだったのです。気分のすぐれなかった母はそれでも体力を回復するためにと食べたのですが、それ以来カレーが苦手になってしまいました。しかし、その事実知った私はなにか大きな謎が解けたような感動を覚えました。なぜ自分はこんなにも無性にカレーに魅かれるのか?生まれたての、目もよく見えない自分を包んでいたであろうあの至福の香り。それがきっと全ての始まりで、私の生まれて初めてのカレーの思い出なのです。よく覚えてませんが…。

→カレー好きの人のエピソードに「物心がつく前からカレーには目がなかったらしい」的な話がありますが、生まれる前からというのは、筋金入りです。弟子にしてください。(水野仁輔)

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