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カレーのヒント 079:石を彫るように

作り始めてからできあがるまでに
2時間かかるカレーというのはあるけれど、
2年間かかるカレーというのはないんだな。

イサム・ノグチ展を見ながら、そんなことを考えた。
石を彫る作業は気が遠くなるようなもので、完成までにかなりの時間を要する。あるイメージをもって創作を開始しても、1年経過したところで気が変わるとか、当初の計画からずれてくるとかいうこともあるだろう。

1年、2年と時間が経てば、その分、自分の感覚が変化し、実力が上がるから、それに伴って目指すべきゴールが違うものになったりしそうだ。

たとえば僕は、2年前の自分のレシピ本を開いたりすると、写真を見てもレシピに目を通しても「へたくそだなぁ」と思ったりする。当然、自分の実力が2年分進化しているわけで、「いまならもっと上手に作るのに」という気持ちが出るのは普通のことだと思う。

ただ、カレーは長くても2時間以内くらいで完成してしまうから、作っている最中に自分の感覚や実力が変わることはなく、ゴールを迎える。それが普通のことだけれど、もし、作り始めてからできあがるまでに2年間かかるカレーが存在するとしたら、いったいどんなカレーができあがるんだろう。それはすごく興味があるけれど、実現させるのは難しいことだろうなぁ。

いつか石を彫るようにカレーを作ってみたいと思う。

(水野仁輔)

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