カラフルカレー

カレーのお話 001:「ビー・ア・カレープレーヤ―!」

「ビー・ア・カレープレーヤー!」

カレーとは、食べ物である。
なんだそれ……。当たり前のことじゃないか。そう、まず最初にこの当たり前のことをハッキリとさせておきたい。だからもう一度言っておこうかな。カレーとは、食べ物である。だから作り手がおいしいカレーを作り、食べ手がおいしくカレーを食べる。その関係が成立することで、カレーを巡るほとんどすべての人に幸せが訪れる。そうやって日本のカレー文化は100年以上の間、培われてきた。これがメインストリームだ。
メインストリームがあるということは、サブストリームもある。本流は、上流から下流に流れるにしたがって川幅を広げ、やがて大海に流れ出る。その途中でいくつもの支流を生む。僕は(自慢じゃないけれど)カレー界の支流にずっといる。必死にオールを漕ぐときもあれば、浅瀬でチャプチャプしているだけのときもある。いずれにしても本流に戻りたいのではなく、支流に浮かぶ喜びを徹底的に楽しんでいる。

カレーとは、コミュニケーションツールである。
出張料理集団「東京カリ~番長」を中心に僕自身がずっとカレーをそう解釈し、活動を続けてきた。支流でコソコソ楽しんでしているのだから、何を言っても、まあ、大目に見てくれるだろう。カレーを食べ物としてだけでなく、思いつく限りあらゆる角度から見つめては面白がってきた。スパイスを携えて全国各地を訪れ、ライブクッキングをするというシンプルな行為がさらなる支流を生み、活動の幅は広がる一方だ。
カレーがあるから行きたい場所に行き、会いたい人に会えた。メンバーの誰もが本業がありながらカレー活動にいそしんでいたせいか、僕たちは、ずっと「史上最強のアマチュアカレー集団」と呼ばれてきた。別に悪い気はしないけど、しっくりは来ていなかった。
数年前に僕は脱サラをし、“カレーのことだけをやる人”となった。すると、みんなが「水野さんはプロになったんですね」と言う。カレーで食べていればプロ、カレー以外で食べていればアマチュアというのが、一般的な解釈なのだろう。そういうもんなのか、と思ったけれど、やっぱりプロと呼ばれるのもしっくりは来ない。

「あなたは誰ですか?」と聞かれたら、「水野仁輔です」と迷いなく答える。「何をしているのですか?」と聞かれたら、口ごもってしまう。昔も今も変わらない。「東京カリ~番長の調理主任です」と言えば、キョトンとされる。「カレー研究家です」と言えば、「そういう人もいるんだねぇ」と、なんとか納得してもらえるが、言った自分が「違うんだよな……」とモヤモヤする。
ある時期、自分で名付けたわけじゃないが、「カレースター」と呼ばれていたことがある。一部の人は盛上がり、一部の人からは冷ややかな視線を浴びた。スターだなんて、支流にいるくせに本流にやってきたような肩書きに聞こえるから身分不相応なのだろう。だからまもなく封印した。
プロでもアマチュアでもスターでもない僕は、「じゃあ、あなたはカレーの何者なんですか?」と聞かれたら、「プレーヤーです」と答えることにしている。カレープレーヤー。あまりかっこいいネーミングではないけれど、これがなんともしっくりくるじゃないか。

東京カリ~番長は、カレーの食べ物以外の側面を見つけ、徹底的に楽しんできた。それは、カレーがサブカルチャーでもあることを体現する行為だったと今は思う。最近、周囲に「プレーヤーになろう」と呼びかけるようになった(何様のつもりなんだ!?)。僕の考えるプレーヤーとは、「おいしいカレーを作る、おいしいカレーを食べる、を目的ではなく手段にできる人。ゴールではなくプロセスにできる人」である。
おいしいカレーを作れるようになり、食べられるようになることを目的にしている人は、カレーの本流にいる。僕たち支流を漕ぐプレーヤーは、「おいしいカレーを手にしたら、その先に何をしたいのか?」を考えて行動できる人でありたい。
いま、そんなプレーヤーが急増している実感がある。彼らはカレーをモチーフに思いつくことを実行に移し、存分に楽しんでいる。個性的なカレーイベントが全国各地で多発しているのがその最たる例だと思う。やればやるほどカレーは自由であることに気づき、誰のものでもないことを実感する。プロかアマかは問わない。天才か凡人かも関係ない。シャイニングスターなのかローリングストーンなのかにも興味はない。ともあれ僕らはプレーヤーなのだから。

この世の中の片隅に存在するカレー界の、これまた端っこのほうで、こっそりニヤニヤしながらやっていることだから、声を大にして発信したいとは思わない。たまたまそばを通りすがった誰かが興味を持ったら寄ってみてほしい。そんな偶発的な出会いを大事にして身の丈に合った活動をしているだけでも、カレーライフは想像を絶するほど楽しく送れるのだよ。それは、東京カリ~番長や僕自身が保証してもいい。
道を歩いていて声をかけられるようなことは一度もない僕たちが、20年もの間、前向きにカレー活動を続けて来られるのは、プレーヤーとしての喜びを知っているからだ。サブカルチャーとしてのポテンシャルは無限だから、僕たちは、これから先もこの場所から離れることはないだろう。
「ふうん、そんなの別にどうでもいいや」と思う人は、見て見ぬふりをしていてほしい。「なんだかちょっと面白そうだな」と思う人は、こっちへおいでよ。仲間になろうよ。

ビー・ア・カレープレーヤー!
 プレーヤーになるために“これはしたほうがいいかな”というのが2つ、“これはしないほがいいかな”というのが2つある。発表しよう! カレープレーヤー4カ条である(なんだかキリが悪いな……)。

その1:思いついたことは形にし、実行に移そう。
その2:一人でやろうとせず、必ず仲間を募ろう。
その3:正解や不正解を求めるのはやめにしよう。
その4:誰かの批判や批評はしないようにしよう。

楽しければ続ければいいし、飽きたらやめたり休んだりすればいい。別に誰かに頼まれてやっているわけじゃないのだから、ゆるく構えていればいいのだ。きっとなるようになる。ならなければならないで諦める。大きな志やら夢やら目標やらは必要ない。とまあ、そんな調子だから、東京カリ~番長以外にもこれまでに僕が立ち上げたプレーヤー集団はたくさんある。
カレー将軍、東京スパイス番長、LOVE INDIA、欧風カレー番長、スパイス伯爵、カリーソルジャー、ザ・ニホンジンズ、スパイスクラフトワークス、カレンジ……。
10以上のグループがあって、延べ50人以上の仲間がいる。なんとハッピーなことだろうか。たくさん立ち上げすぎて、混乱しそうになっているけれどね。あ、そうだ、直近はキャンプでカレーを作るシェフ集団を結成しようとしているんだった。あれも名前を考えなきゃな。あー、忙しい、忙しい。

(水野仁輔)

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別名“カレープレーヤー”養成所。入学すると50人の仲間(同級生)に出会える。授業に出るとカレーの未知なる魅力に翻弄される。卒業すると500人以上の仲間(卒業生)ができる。つまり楽しい日々はずっと続く。そして校長の僕は取り残されてちょっぴり寂しくなる。そんな学校です。水野仁輔

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