カレーのヒント 061:木を見て森を見ず?
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カレーのヒント 061:木を見て森を見ず?

カレーリーフの種を植えてから、気がつけば、90日が経っていた。

芽吹くまで1週間ほど。それからあとは3か月近く毎朝欠かさず水をやり、見守った。種は136粒届き、発芽したのは125粒だったから、立派な発芽率である。それらを100個の小さな鉢で育てている。2か月を超えたあたりからはなかなか立派な成長ぶりを見せている。大きいものは手を広げて小指と親指の間よりも大きく育っている。

途中から気づいたことがある。大きくなってくると葉の開きもいいから水をやったときに葉の上に水滴がつき、その重みでカレーリーフの葉たちが頭をたれたり、少し斜めに傾いたりする。だから、ざーっと100鉢に水をあげた後、僕は必ず、100鉢のカレーリーフを植えからなでるようにポンポンと手で軽くたたき、水滴を落とすのだ。そうするとしゅっとまっすぐに戻る。そんなことを続けた。

葉を見て枝を見て、土の表面を触って乾き具合で水をやる量を変えた。いまもすくすくと育っている。さて、そろそろ彼らを送り出すときがやってきた。僕はカレーリーフ栽培農家ではないから、100鉢を販売するわけでもない。もともと沖縄・名護のやんばる畑人プロジェクトの農家さんから無料でもらった種だしね。

ふと気になって通販で販売しているカレーリーフの苗を見てみると、相場的には同サイズで900円ほどで取引されているようだ。ふむふむ、100鉢を販売すれば10万円になるのか。じゃあ、やっぱり売ってみるか、などという思考には至らない。

かといって、僕は、カレーリーフを自分で使うために育てているわけではない。僕自身は去年くらいから自分がカレーを作るときに滅多にカレーリーフは使わなくなった。カレーリーフを使ってカレーを作る“マイブーム”はだいぶ前に過ぎている。

はたまた、カレーリーフを普及したいとか、カレーリーフの魅力を拡散したいとか、そういう気持ちもない。好きな人は好きだろうし、興味がない人にとっては雑草だろうし。僕はカレーリーフの香りは気に入っているけれど、みんなが自宅で育てるようになったらいいのに、とは別に思わない。

ただ、カレーリーフが人気なことは人気なのだ。僕の周りにはカレーリーフを使いたい、カレーリーフを育てたい、という人が後を絶たない。本当に後を絶たない。インスタグラムでカレーリーフ関連の投稿をしたときは、他の投稿の1.5倍から2倍ほどの反響がある。なんと関心の高い人が多いことか。
だから、僕は、カレーリーフの鉢を100人に差し上げることにした。11月に入ったら、カレーの学校の卒業生たちがカレーリーフを受け取りにキッチンにやってくる。さて、そこからどうしようかな、と僕は考える。僕は100鉢のカレーリーフで何か面白いことがしたい。「カレーリーフでそんなことするの~? たのしそ~!」みたいな何かを。

いくつか考えがある。それをこれから、詰めていきたいと思う。発想のヒントになったのは、僕が毎朝やっている、葉を見て枝を見て土を見てポンポンとやったあれだ。この3か月間、カレーリーフの木をよく見続けた。なにかそれが説明しがたい楽しさや喜びをプレゼントしてくれた。カレーリーフの木をよく見る。カレーリーフの木とじっくり向き合う。もし、100人がそんなことをして、その結果、見つけたものをユニークな形で教えてくれたら、楽しそうだなぁ、と思う。僕が生まれてから3か月間、育てた100鉢たちがどんな顔を見せるのか、興味がある。

順調に大きくなったら、また100鉢で次に楽しめることを考えようと思う。そんな風に進めて行ったら、いつか、あの木が集まって、森になってしまうかもしれない。

(水野仁輔)

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別名“カレープレーヤー”養成所。入学すると10人以上の仲間(同級生)に出会える。授業に出るとカレーの未知なる魅力に翻弄される。卒業すると600人以上の仲間(卒業生)ができる。つまり楽しい日々はずっと続く。そして校長の僕は取り残されてちょっぴり寂しくなる。そんな学校です。水野仁輔