カレーの思い出 226:恋は盲目

20代半ばごろ、お付き合いしていた人とインド料理店に行きました。彼はどちらかというと、普段から頼りないタイプの人でした。
レストランではそれぞれ好きなカレーを選び、彼はナンを、私はターメリックライスを注文。しばらくして料理が運ばれてきて、食べようとしたところ、私は黄色いライスの端っこに、黒く動くものを見つけました。なんとターメリックライスに赤ちゃんゴキブリが潜んでいたのです。あまりの衝撃に声も出ず、固まっている私に気付いた彼は、素早く紙ナプキンでその黒いものと周辺の黄色いライスを掴みとり、何事もなかったかのように「ほら、もう大丈夫」と、にっこり。
その迷いのない素早い動作に気圧され、私は思わず「う、うん」と食べ始めました。そこに、「どうかしましたか?」と何か察知してやってきたインド人スタッフ。「ううん、何の問題もないよ。ちょっとゴミが入ってただけ」と、彼は周りのお客さんに聞こえないよう伝えました。私はそんな彼を「男らしい!」と、ちょっぴり嬉しく思ったものです。
でも、今この思い出を振り返ってみると、あのライスをそのまま食べてしまったのは、やっぱりちょっと気持ち悪いなと思いました。恋は盲目ですね。ちなみに食後、「おわびにどうぞ」とお店からマンゴーメルバをいただきました。

→男らしい! 僕もそう思います。(水野仁輔)

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