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カレーのヒント 028:タカタクとカタクトゥ

パキスタンに来ている。
パキスタン料理にタカタクというものがある。広い鉄板にヘラ型の包丁を2本、タカタクと叩きながら料理する。この調理法が極めて合理的で面白い。長い歴史の中で自然にできあがったプロセスだとは思うけれど、僕からすると、できあがりのゴールイメージから逆算して何をどのタイミングに入れてどう加熱するかが組み立てられているように見える。日本でカレーを作っているときに感じているいくつかの疑問点を解決する方法やヒントが色々と見つかった。それはまた整理ができたらnoteの問題シリーズででも詳しく書きたいと思う。
もうひとつ、面白いと思ったのは、この調理名。調理中に聞こえる音が名前になっているのだけれど、ヘラの叩き方でシェフによって出る音が違う。リズムや音量なんかも違う。いずれにしてもひとつの曲を演奏するかのようにテンポよく進むのが特徴だが、もちろん楽譜があるわけではない。ただ、その人の中でいくつかの調理法が確立されていて、それを、その日の食材の火の通り方などによって微調整しながら作っている。ジャズでスタンダードナンバーを演奏しているのに近いのかもしれない。
タカタク、タカタク、と音を鳴らす人もいれば、カタクトゥ、カタクトゥと鳴らす人もいる。だから、カラチとラホールを訪れているが、いろんな場所で出会うこのメニューは、「タカタク」と書いてあるところもあれば、「カタクトゥ」と書いてあるところもある。僕が目にしたのはそれだけだけれど、もっと他の呼び方もあるのかもしれない。
調理プロセスと仕組みは頭に入ったから、日本でもイベントでこれをやったら面白いかもなぁ。「カタクトゥがいい? それともタカタクにする?」「いや、トカタックーで」みたいな。呼び名で全部味が変わる。片手鍋でカレーを作るとき、木べらを鍋のふちにトントンと叩くクセがある。これをやってしまうシェフは僕に限らず多い。その音でリズムを取っている部分もある。なんか、日本のカレー版タカタクを開発してみよっかな。
(水野仁輔)

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別名“カレープレーヤー”養成所。入学すると50人の仲間(同級生)に出会える。授業に出るとカレーの未知なる魅力に翻弄される。卒業すると500人以上の仲間(卒業生)ができる。つまり楽しい日々はずっと続く。そして校長の僕は取り残されてちょっぴり寂しくなる。そんな学校です。水野仁輔

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