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カレーのヒント 056:スパイスバルーン

ポッドキャストのラジオ番組を始めた。「水野仁輔のスパイスバルーン」という。ゲストは毎回、メタ・バラッツという男で、東京スパイス番長というインド料理探求集団のメンバーである。
番組の中でも話しているが、ラジオを始めることにしたのは、バラッツのインド小噺がとっても面白いからだ。この面白さを自分が独り占めしてしまうのはもったいない。そう思ったのは、7年ほど前のことだった。
バラッツはもうすっかり人気者で、イベントに料理教室にと大忙しだから、バラッツの面白さを僕が独り占めしているわけではない。ただ、「バラッツさん、面白いですよね」と僕に言ってくれる人の話を聞いていると必ずと言っていいほど、「そこじゃないんだよなぁ」と思う。
みんなが面白いと思っているポイントと僕が面白いと思っているポイントはちょっと違うのだ。つまり、僕から言わせてもらえば、彼の真価は正確に届いていないんじゃないかと思っている。まあ、はっきり言って余計なお世話だし、見当違いも甚だしいのかもしれない。現にラジオ番組の中でバラッツ自身も、こう言っている。

水野「バラッツの面白さをもっと伝えたいんだよね」
バラッツ「どこが面白いんでしょうねぇ」

他人事である。
まあ、ともかく、ラジオはゆるく長く続けていきたいと思う。話は戻って、番組名の「スパイスバルーン」だが、「どうしてバルーンなんですか?」という質問をいくつかもらったし、これからもあると思う。中には、「スパイスの風船が割れて香りが飛び散るのを想像しちゃった」という人がいて、すごい発想だと思った。
一応、質問に対しては、「風船のようにふわふわと漂うようなゆるい話をする番組だから」と答えることにしている。が、完全に後付けである。たいてい僕が立ち上げるものは名前にあまり意味がない。「東京カリ~番長」だってなんの意味もないし、「AIR SPICE」だってなんとなく、で名付けている。後になって理由を聞かれて困るから、「エアギターから着想したんです。自宅にスパイスを常備していなくても、さもスパイスがあるかのように調理ができるサービスだから」などと言うと、「なるほどぉ!」と感心され、小さな罪悪感が残る。

で、「水野仁輔のスパイスバルーン」の名前の本当の由来は、わが敬愛する故・大瀧詠一氏のラジオ番組「大瀧詠一のスピーチバルーン」のパクリである。同名の曲から来ている番組名だと思う。
オマージュと言えば聞こえがいいのかな? ともかく、どこかでスパイスバルーンを知った人が何かの間違い(?)でスピーチバルーンにたどり着いてくれたらとっても嬉しい。それはラジオ番組の内容ともスパイスやインドについてのこととも何の関係もないものだから、表向きに言う機会はなさそうだ。しかも、これから先、どこかで「スパイスバルーン」を聞いた人が、「おお、もしやスピーチバルーンの……?」とか「大瀧詠一ですねぇ!」とか言ってくれることもなさそうだ。
だから、ここにひとまず書いておくことにした。いつか大瀧さんが聞いてくれるかなぁ。ま、スパイスにもインドにも1ミリも興味ないだろうなぁ。

(水野仁輔)


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別名“カレープレーヤー”養成所。入学すると50人の仲間(同級生)に出会える。授業に出るとカレーの未知なる魅力に翻弄される。卒業すると500人以上の仲間(卒業生)ができる。つまり楽しい日々はずっと続く。そして校長の僕は取り残されてちょっぴり寂しくなる。そんな学校です。水野仁輔

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