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カレーのヒント 057:著者の表現力・読者の想像力

10冊目となる紀行本、通称チャローインディアが完成した。
改めて読み直してみると、細かいところがたくさん気になってしまう。完成する直前までは、「すごくいいものができた」と思う。完成した直後からは「なんでこんなものを作ってしまったんだろう」となる。
いつものことだ。
まあ、そこまでひどい反省じゃないにしても、文章の表現の細かい部分についてちょこちょこと違和感がある。もう書き直せるなら書き直したいみたいな気持ちになってくる。
いつものことだ。

チャローインディアは、僕の自費出版の中で最も読者が少ないタイトルだ。一方で僕は最も面白いタイトルだとも思っている。このギャップにも寂しさを感じるが、仕方ない。ただ、数は少ないが熱狂的なファンが最も多いタイトルでもある。長い手紙やメールをもらったり、キラキラした目で感想を話してもらったりする。
そんな人たちが決まって口にするのは、「一緒に旅をしているような臨場感がすごい」というセリフだ。とてもうれしい。今回の号でもそのような言葉を頂いて、ふと思った。そう言ってくれる読者は、きっとすごく想像力が豊かなんだろう。僕の文章をはるかに超えたところまで彼らの中で物語を膨らませ、自分自身がジョインしているのだから。

本(文章)というものは、著者の表現力と読者の想像力を掛け合わせて成立するものだと思う。この共同作業がうまくいったときに幸せな結果を生む。でも、うまくいかなかったときには不幸になる。うまくいかない理由は、いくつかある。

A. 表現力が足りない
B. 想像力が足りない
C. 感性や求めるものが違う

Aは著者の筆力によるから努力し精進するしかない。Bは本を作る側の僕が言える立場にないけれど、想像しやすくする工夫はできそうだ。Cはその本の顔つきに偽りがなければ買ったり読んだりする前に回避できることだろう。よって、解決策もいくつかある。

A’. 筆力を上げる
B’. 切り口や構成を工夫する
C’. 内容を正しく伝える

こんなことを考えたのは、「チャローインディアをうちの出版社から書籍化しませんか?」という話があったからだ。そんな話は数年に1度くらいで出ては消えする。僕は基本的に自費出版の作品を他社から書籍化することにあまり興味がない。だって、作りたい本をそれがベストだと思った状態で自費出版しているのだから。
ただ、たいていこの手の話をしてくれる編集者には熱狂的なファンだったり熱い人が多いため、機会があるのなら、別の形でよみがえらせたいという気持ちもある。10年分のチャローインディア。10年分の書き直しをできるチャンスでもあるのだし。本当にそれが実現するかどうかはわからない。

ま、ネックは僕の表現力(筆力)の乏しさに尽きるけどね。A’をとことん向上させたうえで、B’とC‘も改善できれば、いわゆる商業出版化されても、それなりの読者に楽しんでもらえる作品になるかもしれないなぁ。がんばろ。

(水野仁輔)

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別名“カレープレーヤー”養成所。入学すると50人の仲間(同級生)に出会える。授業に出るとカレーの未知なる魅力に翻弄される。卒業すると500人以上の仲間(卒業生)ができる。つまり楽しい日々はずっと続く。そして校長の僕は取り残されてちょっぴり寂しくなる。そんな学校です。水野仁輔

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