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カレーのヒント 044:紙じゃないと書けないのだ

『インド即興料理旅行2020 ~チャローインディア~ 煮込み編』の執筆がラストスパートに差し掛かっている。

まいどのことだけれど、まずPCに5万字ほどの原稿を書きなぐる。その後、何度も何度も読み直して修正を加えていき、加筆修正のうえ、最終的に4万5000字ほどに収斂するのが僕のやり方だ。今回のその方法を取ったのだけれど、どれだけ読み直しても修正する手があまり動かない。

結果、目がPCモニター上の文字を右上から左下に追っていくだけになってしまう。最初に書きなぐる5万字は、小学生の日記レベルの内容だから、このまま書籍化なんてしたら、永遠に後悔するような仕上がりになる。
ダメだ、このままじゃダメだ。

そう思って、一度、原稿を出力した。45枚ほどのA4用紙がプリントアウトされ、穴あけパンチで穴をあけてリングファイルにとじる。ボールペンを持って、もう一度、読み直す。すると、どうだろうか。スラスラと直したい箇所が出てきて、まもなく45枚は赤字で真っ赤っかになった。

これもいつもの方法だけれど、最後まで赤字をした後、自分の中で読み直しの切り口というかテーマを変更して、また赤字を入れていく。今度は赤字ではなく、青字である。すなわちボールペンの青を準備し、赤字の上からさらに青字で修正を加えていくのだ。一通り終えると、全体の文字量は、4万2000字程度になる。8000字を削ったことになる。

この初回の最初の読み直しでは、蛇足を削除してシェイプアップすることに重きを置く。さて、もう一度、出力。穴あけパンチしてファイルへ。次に読み直すときには、PCに保管してある旅の写真をざーっと見ながら、当時の景色や心象風景をなぞる。今度は加筆に重きを置いて、文字数を増やしていく。いまは、その作業が始まったばかりだ。そこで、改めて思ったことがある。

やっぱり、僕は、紙じゃないと、文章は仕上げられないのだ。

文章を書くことはできる。たとえば、(こういうのもなんだけれど)ネット上にアウトプットするような文章なら、PCでスラスラと書き、ほとんど修正することもなく、あっという間に仕上げられる。だから、定期にやっている連載などは、書き始める前の考える時間はかなり長いが、キーボードを打ち始めたら、30分以上かかることはほとんどない。

でも、書籍にするものは、ダメだ。何度も出力して、何度も書き込んで……、とやらないと仕上げられないのだ。

本(紙媒体)は終わったともう昔から言われている。本は終わったのかもしれない。でも、僕が紙じゃないきゃ書けないように、紙じゃなきゃ読み込めない人がいる。その数が圧倒的に少なくなっているという点で終わったのかもしれないが、仮にそれが終わりを意味するのだとしても、僕は、自分も含めて紙じゃなきゃ読み込めない人に向けて、紙じゃなきゃ仕上げられない文章を綴っていきたいと思う。さ、頑張って仕上げよう。

ああ、もう一度、パキスタンに、行きたい。

(水野仁輔)

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