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カレーのヒント 043:新刊・献本・挨拶・状

確か今日か明日あたり?に今年の新刊『スパイスカレードリル』が発売される。
著者献本分というのが20冊程度あるので、各種グループで一緒に活動している仲間たちに送ることにしている。が、少し距離のある人も含めてまとめて送るため、挨拶状はちょっと硬い文章になる。
この文章を書いているときにいつも思うのは、本書を説明するなら「まえがき」や「あとがき」にある通りなんだよな、ということ。とはいえ、意外とまえがきやあとがきは著者が期待するほど読者は読んでくれなかったりするので、悩ましい。
同じことは書けない。別のことを書くけど同じような内容を伝えたい。書いているうちに「ちょっとそういう感じじゃないんだけどな」みたいな気持ちが出たり、「この書き方の方がわかりやすかったかな」と思ってみたり。
校了したはずなのにまだ原稿執筆が続いているみたいな感覚になる。

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拝啓 いつもお世話になっているみなさま

いろいろと大変な時期ですが、いかがお過ごしでしょうか?
このたび、新刊を出すことになりましたので、いち早くお届けしたい方々にお送りさせていただくことにしました(宣伝していただかなくて結構ですので、パラパラとめくって読んでみてください)。

スパイスカレーの“ドリル”です。
帯に書かれた「一生使える!」はさすがに言い過ぎかな、と思っていますが、“おいしいカレー”の鍵を握る普遍的なテクニックについて表現したい、という思いを一冊に込めました。

おいしいカレーもおいしくないカレーもすべてはテクニック次第。
「油」と「水」と「塩」と「スパイス」を使って食材の風味をコントロールするテクニック。そのすべてをつかさどる「火」を操れるようになりたい。

僕は正直言うと「レシピにはあまり意味がない」と思っています。
本当に大事なことはレシピで表現できないからです。たいていのレシピには、そのカレーを作るための“手順”が書かれています。たとえばプラモデルのように、誰が組み立てても順番通りにやれば同じものができあがるのなら、その手順は大事です。でも、カレーはそうはいかない。

鍋中の状態や食材の具合いは、いつだってイメージ通りになってはくれません。20年以上カレーを作り続けても、毎回新しい顔を覗かせます。それをレシピ化したところで、読者の鍋中が僕の想像したようになるはずがないんです。
だからギャップを埋めるために、「再現性の高いレシピ」が求められます。そのために「一般化」したり「平均化」したり「簡易化」したり、さまざまな工夫をしていますが、結局、根本的な解決にはならないんです。

レシピはなんでもいい。レシピを題材に普遍的なテクニックを身につけてほしい。どんな味わいのカレーが好きかは、「人それぞれ好み」ですから。

タイトルは「ドリル」だし、見た目は「レシピ本」ですが、カレーを作る上で大切な本質部分を表現したつもりです。これをお届けするみなさんには感じてもらえそうな気がしています。が、読者に伝わるかなぁ。それはちょっと不安。でも、今年も自分らしい一冊ができたと思います。ご高覧ください。

敬具
2020年5月15日 水野仁輔
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(水野仁輔)

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