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カレーのヒント

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水野仁輔が日常生活のふとした体験の中から、カレー活動のヒントになりそうなものを見つけて、思いのままに綴っています。日記みたいなもの?
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2019年12月の記事一覧

カレーのヒント 020:スパイス泥棒

カレーのヒント 020:スパイス泥棒

「こないだね、うちの店に泥棒が入ったんですよ」
「え!? 無事でしたか?」
「何も取られなかったんだけどね、棚のガラスを開けようとした形跡がある」
「棚に何か大事なものが?」
「あるんですよ、僕が調合したスパイスがね。あれを狙ったに違いないんだ」

15年ほど前、町田の老舗カレー専門店『アサノ』を訪れたときに店主とそんな話をした。あのときの彼の目は真剣だった。横にいた奥さんがどんなに否定しようと持

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カレーのヒント 019:撮られた写真を撮る

カレーのヒント 019:撮られた写真を撮る

現在開催中のやんばるアートフェスの展示を観に行った。来月、このフェスのファイナルでカレーを作りにいくことになっているため、ロケハンを兼ねていた。熱帯植物園(だったかな)の中にある写真の展示に目を引かれる。青空に洗濯物のようにつるされた大型の写真がどれもいいのだけれど、特にトンボの写真が目に留まった。トンボの止まる葉の裏にクモがいる。シンメトリーな構図になっていて面白い。思わずスマホを出して、撮った

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カレーのヒント 018:ニハリについて想うとき、僕の頭の中にあるもの。

カレーのヒント 018:ニハリについて想うとき、僕の頭の中にあるもの。

「またニハリ!?」
最近、友人に言われてちょっとだけ傷ついた。
そう、確かにここ半年ほど、僕の頭の中はニハリでいっぱいだ。普段、食べ歩きをしない僕が、北関東のマニアックなパキスタン料理店にせっせと足を運んだり、都内でもトップクラスのインド人シェフからニハリの作り方を習ったり、彼が料理長を務めるレストランを貸し切ってニハリディナーを堪能したり……。
僕自身、高知のイベントでニハリを作ったのを皮切りに

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カレーのヒント 017:ネーミング

カレーのヒント 017:ネーミング

蟹を食べた。

この蟹、石川県であがると「香箱蟹」、福井県であがると「セイコ蟹」と名前が変わるらしい。同じ蟹なのに。確かに魚介類はそういうものが多い気がする。面白い。

カレーのネーミングもそういうのがあるといいのかも。レシピはひとつでも作る人によって名前が変わる。たとえば、カレー将軍のメンバーが同じレシピでチキンカレーを作ったとして、伊東将軍、緑川将軍、野口将軍、水野将軍が作ったら全部、名前が変

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カレーのヒント 016:コピーじゃダメだ

カレーのヒント 016:コピーじゃダメだ

カレーの学校第15期の募集が始まっている。
学校では、「プレーヤーになること」を目標に授業を行う。プレーヤーの条件として僕が掲げているのは、「おいしいカレーを目的ではなく手段にできる人」である。詳しい説明は省くが、似たような言い回しでこう言うこともある。「僕にとってはインド料理は手段で日本のカレーが目的です」。
インド料理が好きだ。探求したい。だから、毎年欠かさずインドへ行く。でもそれは僕にとって

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