カレーのヒント 011:焼酎に比べれば…
麦焼酎発祥の地と言われている壱岐島で、酒蔵を訪ねた。焼酎と日本酒を共に造っているという。話を聞くと、「日本酒はファーストフード、焼酎はスローフードなんです」と独特の説明をしてくれた。
日本酒の場合、醸造してから飲むまでの時間が短いが、焼酎は蒸留してから熟成期間を置くため、飲むまでの時間が長くなる。だから新しい手法に挑戦したとしても、その結果が出るまでに3年かかったりする。3年前の“挑戦に関する記録”は残っていてもそのときの感触やイメージまでは残っていない。日本酒に比べて挑戦と結果がリンクしにくいという。興味深い話だった。
焼酎は発酵の後、蒸留と熟成を経て完成する。常圧蒸留か減圧蒸留かによって原材料の風味をどこまで残すかが変わり、その後、熟成させる樽の種類や期間によってまた風味が変わる。
焼酎と同じく風味を大事にするカレーの方はといえば、出来上がった瞬間から味見ができる。挑戦の結果が瞬時にわかる。レシピはもちろん、作っている途中の感触や香り、イメージがハッキリと頭に残っているうちにおさらいができるのだ。なんて恵まれた環境なんだろう。
もっと挑戦しまくり、実験しまくり、ただちに結果を見て復習したり思考したり次の挑戦をしたりしなくちゃいけないな。壱岐島の焼酎の酒蔵で、「怠けてはいけない!」と改めて思った。(水野仁輔)