カレーのヒント 016:コピーじゃダメだ
カレーの学校第15期の募集が始まっている。
学校では、「プレーヤーになること」を目標に授業を行う。プレーヤーの条件として僕が掲げているのは、「おいしいカレーを目的ではなく手段にできる人」である。詳しい説明は省くが、似たような言い回しでこう言うこともある。「僕にとってはインド料理は手段で日本のカレーが目的です」。
インド料理が好きだ。探求したい。だから、毎年欠かさずインドへ行く。でもそれは僕にとってはゴールではない。僕はインド人に憧れているわけでもないし、インド料理をおいしく作ることを目的にしているわけではない。好きなインド料理を探求することによって、日本のカレーの魅力を掘り下げたい。それが目的である。
このことは、こういう回りくどい説明以外に伝える方法はないものだろうか、と考えているけれど、なかなか見つからない。
ラジオを聞くのはもっぱら「ラジコ」のタイムフリーばかりになってしまった。山下達郎さん、草野マサムネさん、ピーターバラカンさん、宮治淳一さん、細野晴臣さんの番組をよく聞く。本当は、チチ松村さんや片寄明人さんの番組も聞きたいけれど、タイムフリーサービス外。
まあ、ともかく、ずっとタイムフリーで好きな音楽番組ばかりを聞いている。いつものように細野さんの番組を聞こうとおもったら、ユーミンの番組で細野さんが対談している回を発見した。聞いてみると面白い。そして、思わず手が止まる会話があった。
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ユーミン:日本語とロックを融合したのがはぴいえんどなんだけど、その姿勢自体がやっぱりすごいロックなわけだったんですよね。
細野晴臣:そうだね、そうそう。ロックが好きなあまりに「コピーじゃダメだ」っていうね。
ユーミン:アティテュードですよね。
細野晴臣:そうだね。
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はっぴいえんどが日本語とロックを融合したという功績については賛否あるみたいだけれどそれよりも何よりも、「コピーじゃダメだ」っていう言葉がささった。
音楽において、「(主にアメリカン)ロックと自分のやる音楽」という細野さんの関係は、「インドカレーと自分が作るカレー」に置き換えるとしっくりくるな、と思った。そう、コピーじゃいやなんだ。だから僕はカレーを作り続けている。それが僕のカレーに対する“アティテュード”なんだと思う。
(水野仁輔)